東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 押山研究室

東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻

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II. 計算生命科学

II-1. 生体内における高効率のエネルギ変換機構

生体内では、極めて効率的なエネルギー変換が行われています。それは蛋白質という反応の舞台での、電子とプロトンという2大俳優による精巧な芝居です。そこでは電子遷移をトリガーとして蛋白質の3次元立体構造が変化し、様々な酵素反応を促しています。

たとえば、生命活動を支えているエネルギーは、ATPの形で生体内に蓄えられ、必要な場所で消費されますが、その体内電池ATPの生成は、主に細胞内のミトコンドリアで行われます。摂取された食物は、呼吸によって取り入れられた酸素とともに、解糖系、クエン酸回路を通過し、最終的に電子とプロトンの形で、細胞内ミトコンドリアに運ばれます。電子系に蓄えられたエネルギーは、ミトコンドリア内膜のプロトン化学ポテンシャル差に変換され、そのエネルギーがプロトンモーターによるATP合成に使われます。電子移動とその捕獲、それに伴う蛋白質構造変化とプロトン移動など、ミクロな素過程がわれわれの命をささえています。そしてそのミクロな素過程は量子論で記述・解明されるべき現象です。

当研究室では、こうした精巧なナノマシーンともいうべき生命現象のからくりを、量子論の第一原理に基づいて明らかにする試みを始めています。

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